病気になる脆さが病気を通りぬけることによって払い落とされる。病気の前に戻すのではなく病気の前よりよくする。
by 中井久夫
あなたは病気を克服したことがありますか?
見出しの言葉は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の研究で知られる精神科医で医学博士の中井久夫先生の言葉です。
人が病気になったとき、その病気を治すことよりも、病気になる前よりも良くすることが大切だと述べた深いメッセージですね。
人は病気になると、入院したり通院したりして、行動を制限されることになりますし、何よりも気持ちが沈んでしまいます。
病気になることを喜ぶ人なんていませんし、自分の体だからと、あきらめて弱気になりながらも、何とか病気を良くしようとします。
病気になるということは、何らかの原因があるはずです。
例えば、酒の飲み過ぎとか喫煙、運動不足、日頃の食事など、病気になる原因があるはずです。
その原因となった行動を改善して、新たな行動を始めれば、その後は病気になることはないばかりか、病気になる前よりも健康になることだってありうるわけです。
病気になった原因を追求して、今後は同じような病気にならないように気をつければ、より健康に生きていけるというわけです。
病気になったとき、人は気分が落ち込んでしまい、早く治すことばかり考えてしまいますが、たとえ病気が治ったとしても、治った後の行動の方が大切になります。
薬を飲んだり、治療を続けることが、病気と闘うことではありません。
今後、同じ病気にかからないように、自分の行動を改めることが重要になるのです。
このことは人生にも通ずる話であり、過去の失敗を反省して、それを学んで今後の人生に生かすことができれば、より幸福に豊かに生きていけるはずです。
私たちに必要なのは、なぜ失敗したのかを考え、どうすれば同じ失敗を繰り返さないかを考えて生きていくことです。
同じ失敗を繰り返すとすれば、それは賢い人間とは言えないのですから。
SDGsは、2030年に向けて、持続可能な社会の実現を目指し、理想的でより良い世界を創り出すために、国連が定めている世界共通の行動目標です。
SDGsの目標の中にも、目標3「すべての人に健康と福祉を」という健康、病気に関する目標があります。
つまり、持続可能な社会のためには、病気を克服すること、健康であることも、人間にとっては重要な要素になるわけです。
このことは、単に病気を治すこと、つまり医療体制を整えることのみならず、病気にならない環境づくり、病気になった後のフォローも含まれます。
私たちは、できるだけ病気にならないような環境づくり、病気を克服できる社会づくりをしていくことも、人間として大切な心構えだということを忘れずに、自分達に何ができるのか、真剣に考えていきたいものですね。